8.25"道玄坂を上りきる。クソみたいな温かい風。"

 

札幌方面のJRに乗っている。

"よしむらひらく"
というミュージシャンの歌を今まで本当に沢山聞いてきた。
10年以上前に札幌のサンクルで共演して、CDを買ってから今もずっとだ。
この人の魅力を的を得た言葉で表現してみたいが、安っぽくなりそうで難しい。

ただ間違いなく言える事としては、僕はいつかこの人みたいな歌を歌えるようなボーカルになりたい、なんていう憧れがある。

デカい音で鳴っていても器の小さな歌もあるし、小さく囁くように歌ったって何万人の心に響く事だってある、なんて感じの事は、よく素敵な音楽を批評する時に用いられるけど、よしむらひらく、の歌には、それよりもずっと深い闇を感じる。

それは、東京の闇、だ。

渋谷のスクランブル交差点で、行き交う人達の真ん中で、声に出来ない歌を歌いながら、別に存在証明とかじゃなく、でも悲壮感は漂わず、ほんの少し虚しさを風に預けてる、ような、すごく"優しい闇"だ。
東京に10年住んで、僕はこの"優しい闇"に思い当たる節が増えた。
札幌で出逢った歌だけど、今の僕に一番リンクしているんだと思う。
それは、諦めにも似ているし、自然なことでもあると思う。
これから僕が歌おうが歌わなかろうが、あまり世界は変わらないような、そんな気分にも似ている。

それでも歌いたい気持ちや、音楽を愛しく思う気持ち、歌う事で巡り逢いたい人がいる気持ちや、僕の詩を待っている人がこの世界のどこかにまだ居てくれるような気持ちや、新しい曲を書きたい気持ちは、一体どこから来るんだろう。

もうこの瞬間から2度と歌わない、って思っても、絶対また歌ってしまう気持ちはどこから来て、そしてどこに行くのだろう。

これは歌う事が好き、とか、音楽が好き、とか、そーいった事とはまた違う力が僕を動かしているような気がするんだ。

そして、よしむらひらく、の歌を聞くたび、それらの全てを"希望"として捉えられる力を貰える。

明日も、そして明後日も、
何度だって歌ってみればいいんだよ。

佐々木泰雅

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