3.20

 同い年のバンドマンの友達がいる

それは言葉を弾ませるような関係じゃないし、
しょっちゅう連絡取り合うような間柄でも無い。
でも歌を聞いたら友達だと思えるのが音楽の凄いところだ。

20才そこそこの頃にバンドを始めたんだけど、
その頃に、同い年の煙草スモーキーってバンドが急にスピリチュアルラウンジに現れた。
リハーサルを見た時点で衝撃的に良かった。
ボーカルの長(おさ)は、上下水色のドラえもんのようなジャージを着て、顔には髭を沢山生やし、文豪がかけるような眼鏡をかけ、サンバーストのフェルナンデスのストラトを胸の辺りで持ち、声は少し枯れていてかつ高音も抜けてきて、それでいて歌っている歌詞もメロディも最強に良かった。
本編で演奏していた、エジソン、って曲を聞いた衝撃を僕はずっと忘れないだろう。
その後、一緒にツアー行く事になったり、なんだかんだ仲良くやってた。
けれど、僕は長の圧倒的な魅力の前で何も出来なかった。
僕が歌いたい事は全部君が歌ってしまった。
と諦めのような感情をもらった。
だから、長がやらないけど、僕ならやれる事を新たな道としてイメージしながら手探りでやってみた。
気付いたら煙草スモーキーは居なくなって、長も歌わなくなっていた。
僕が歌いたい事を全部歌って、そのまま居なくなるなんて、まるで伝説になってしまったみたいだ。

先日、下北のろくでもない夜にライブを見に行った。
同い年の男がやってるスリーピースバンドがトリで出ていた。札幌からやってきたそのバンドは、北国の凍てついた氷柱のような魂で、その日出演していた誰よりも自分の声で歌っていた。
ボーカルの彼と何年か前に、彼の運転する車の中でバンドの話をした。
当時、5人組くらいのバンドをやっていた彼は、本当は親友とスリーピースとかでバンドやりたかった、と話していた。
先日のろく夜で見た彼のバンドは、あん時話していた理想の形にとても近いような気がした。
そして、僕が歌いたい事を歌っている、と長に思ったように、思った。

そして、
僕が歌いたい事を歌ってくれてありがとう。
って、あん時はそんな風に思えなかった事を、思った。

このまま居なくなられたら伝説になっちまうからな、オレも頑張って立ちはだかりたい。


佐々木泰雅
フロムTokyo

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